すみません、ルノワール。ありがとう、ルノワール。
2024.10.04
「〆切に追われて、いまこの文章を書いている」という作家然としたことを言いたいがために、わざわざ自前で設定した隔週金曜日という〆切に追われて、いまこの文章を書いている。世の中を動かしているのは情熱でも愛でも希望でもなく、単に〆切なのではないだろうかとこの頃は思ったりしている。
書きたいことが特に見当たらないのだが、森見登美彦氏のエッセイ『太陽と乙女』によると、日記というのは書きたいことが何もない日にこそ積極的に書くべきであるらしいので、とりあえず書き出してみよう。
とにかく、日記なので今日1日の出来事を振り返ってみることから始める。
目覚めたのは11時過ぎ。たいそうのんびりした起床である。というのも、昨晩の25時を回ったあたりから急にガリレオシリーズの映画『沈黙のパレード』を見たくなってしまい、またもや夜更かししてしまったのだ。日中はあらゆることが気だるく感じてのほほーんとしているうちに時間が過ぎるのに、深夜になるとあの本も読みたい、この映画も見たい、この前買ったゲームもしなければ!という気持ちが次から次へと嵐のようにやってきて、目が冴えて冴えて仕方なくなってしまうのは一体なぜだろう。
ところで、こういう人種のことを一般には夜型人間というらしい。世間にはこの夜型人間が一定数蠢いているらしいのだが、学校や会社の始業時間にしろ、お役所や銀行の業務時間にしろ、どれをとっても朝型人間に合わせて設定されているというのは、我々にとってなんという悲劇だろう。全くもって不条理ではないか。どうにか夜型人間が一致団結し、この朝型社会に反旗を翻すことはできないものだろうか。
なんてことを言ってみても、今のところ私はただのお寝坊さんなのである…。
昼間はたまっていた仕事をいくつか片付けて、夜の食事会のために池袋へ。
少し早めに出発してしまったこともあり、食事の時間まで数時間ある。カフェで読書でもしようかと思い、駅前付近をうろついてみた。しかし、東京のカフェというのは店先から中をのぞいてみると、どこも人でいっぱいだ。学生が騒いでいたり、よく分からない団体がぎこちない笑顔で勧誘をしていたり、マッチングアプリで出会ったばかりの男女が初めましての挨拶を交わしていたり、この世の中のあらゆる人間関係がその狭い店内で繰り広げられているのではないかと思わせる気配がある。これでは落ち着いて本など読んでいられそうにない。
どうしたもんかいのと思って彷徨っていると、喫茶室ルノワールを発見した。
一杯のコーヒーが1,000円近くもするお店なので、岡山から出張でルノワールに入った時には、なんたる高い店や!こんなとこには今後は来てやらないぞと思ったりしたものだった。
しかし、店の中をのぞいてみてると、ある程度席が空いている上に、座っているお客さんもスーツをきたおじさんばかりではないか。こりゃ静かに過ごせそうじゃん!と思ってウッキウキで店内へ入った。
思った通り、ゆっくり本も読めた上に、落ち着いて文章を書けたりした。
拝啓、ルノワール。
原価せいぜい数十円のコーヒーをたっかい値段で売りやがって、このぼったくり野郎めと思ったこともありました。でも、そういうことだったのですね。私はひどい勘違いをしていました。
すみません、ルノワール。ありがとう、ルノワール。
これからもどうぞよろしく。
敬具。