
健やかなる男児の移動
2025.01.27
引っ越しのタイミングで車を売り払ってしまったので、最近はもっぱら徒歩で移動している。
いちおう自転車も所有しているのだが、歩いて移動する方がなんとなく大人の余裕を感じるという実に説得力のある理由により、自転車の採用は却下されがちである。
「いかにハードボイルドを体現できるか」というのが私の少なからぬ行動原理となっているのだ。
(実を言うと、その自転車というのが数年前に思いつきで参加したトライアスロンのために購入したもので、お尻のクッションがやけに硬かったり、常に前傾姿勢にならないといけないがためにバランスがとりづらかったりして実にやっかいな乗り物であるというのも、私があえて徒歩を好む理由かもしれない。)
それにしても、散歩であれば30分から1時間くらい何でもなく歩き続けることができるのに、目的を持った移動、例えば最寄駅までの15分となるとやけに時間が長く感じられるのはなぜだろう。
特に手のかじかむような寒空の下を冷たい風に吹かれながら駅まで歩いていると、なんとまあ馬鹿げた行動原理を持ってしまったものだと我ながら情けなくなったりする。
自転車であれば、ものの数分で目的地まで辿り着けるであろうに…。
おっと!
何を言っておる。いかん、いかん。
そんな時にこそ「情けなさもまたハードボイルドの欠くべからざる一側面なのである」と自分に言い聞かせて、決然と歩みを進めるのだ。
健全な男児たるもの、歩くべし。